北海道千歳リハビリテーション大学からのお知らせ
久保田准教授の論文がPLOS ONE誌の被引用数トップ10%にランクインしました
理学療法学専攻の久保田健太准教授が科学雑誌「PLOS ONE」に掲載した論文が、2018年に発表された同誌内で被引用数トップ10%にランクインしました。
【タイトル】
An enriched environment prevents diabetes-induced cognitive impairment in rats by enhancing exosomal miR-146a secretion from endogenous bone marrow-derived mesenchymal stem cells
【概要】
リハビリテーションを模した豊かな環境(EE)が認知障害を改善するメカニズム解明を目的に、骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)由来のエキソソームが含むmiRNAに焦点を当て、EEが糖尿病由来認知症モデルラットを用いて検討を行なった。結果、EE介入した糖尿病ラットでは、通常環境の糖尿病ラットと比べ認知障害が有意に減少し、海馬のニューロンおよびアストロサイト損傷が軽減された。さらにBM-MSCの機能および形態学的異常が改善していた。通常環境糖尿病ラット由来のBM-MSCが放出するエキソソームおよび血清中のmiR-146aレベルはコントロールラットと比較して減少したのに対し、EE介入した糖尿病ラットは増加を示した。さらに血清中の増加したmiR-146aが糖尿病ラットの星状細胞に抗炎症作用を及ぼす可能性を調べるため、糖尿病状態を模倣する高度糖化最終産物(AGE)で刺激した正常細胞にmiR-146aをトランスフェクトし検討した。結果AGEで刺激された星状細胞においてIRAK1、NF-κB、およびTNF-αの発現が有意に高く、これらの因子は、miR-146aトランスフェクトされた星状細胞において減少した。これらの結果は、EEが、内因性BM-MSCによるエキソソームmiR-146a分泌のアップレギュレーションを刺激し、損傷した星状細胞に抗炎症作用を及ぼし、糖尿病誘発認知障害を予防することを示唆した。
【久保田准教授のコメント】
被引用数トップ10%になったという連絡がきて、正直驚きました。
もっと内容が議論されたり進歩していくことで、糖尿病による認知症に対するリハビリテーションの有効性の一助となれれば嬉しいです。
<この研究について>
認知症のみならず、癌や自己免疫疾患など様々な疾患でリハビリテーションが効果があると報告されていますが、歩いたり活動量が上がることでなぜ状態が良くなるのかは未だblack boxです。
単純に筋力や血流量だけではなく、miRNAを用いて分子生物学的にそのメカニズムを解明することで、今後の糖尿病による認知症へのリハビリテーションによる効果への一助になると考えています。
<現在の取り組みについて>
現在は、今回のこの検討を短時間で介入した場合、効果がどうなるかを再検討しています。
またリハビリテーションを模した豊かな環境介入とは少し違うのですが、地域高齢者に対してマインドフルネスを実施し、その効果をmiRNAを絡めて検討しています。
【論文情報】
Kenta Kubota,Masako Nakano,Eiji Kobayashi,Yuka Mizue,Takako Chikenji,Miho Otani,Kanna Nagaishi,Mineko Fujimiya
Published: September 21, 2018
【論文URL】
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0204252
(PLOS ONE のページにリンクします)